「クロッキーって何?」
「クロッキーの練習は何の効果があるの?」
「イラストが上達するにはクロッキーの練習をした方がいいの?」
イラスト初心者は、デッサンやドローイング、模写、クロッキーなど、専門用語で説明されてもピンときませんよね?
また、クロッキーの練習をしても何に効果があるのかわからない方もいると思います。
この記事では、クロッキーの意味や目的、おすすめの練習方法やコツをわかりやすく解説します。また、おすすめの練習サイトもご紹介するのでぜひ活用してください。
ご紹介する記事の内容を実践すれば、イラストを描くときに必要な観察力や洞察力が養えるので画力アップに役立ちますよ。
クロッキーとは
クロッキーとは、「モチーフを短時間で素早く描くこと」です。描く際には、モチーフの特徴を的確に捉えることを意識することが重要であり、形状や人体ポーズなどを線画で描きます。
情報量の多いモチーフでも、クロッキーを行うことで大まかにイメージできるメリットがあります。
また、クロッキーは、描く対象物の特徴を瞬時に捉える練習や、構図作成の練習にも最適です。
クロッキーで必要な道具とは
クロッキーに必要な道具を解説します。
クロッキー帳(スケッチブック)
クロッキーで描くときには、クロッキー帳やスケッチブックを用意しましょう。メモ用紙やコピー用紙、チラシ裏面の白紙などでも良いのですが、クロッキー帳やスケッチブックであれば、絵がバラバラにならず1冊にまとめて管理できるのでおすすめです。
また、描き始めからの上達過程を確認できるので、モチベーションの維持にも役立ちます。
クロッキー帳とスケッチブックの特徴やサイズ、価格をネットショップで調べた結果が下表です。(※2024年8月16日時点の価格です)
クロッキー帳 | スケッチブック | |
特徴 | 紙が薄い 枚数が多い アイデアを書き留めたり、気になった構図を簡単に描いたりとメモ用紙感覚で使用できる 用紙の色や材質に種類がある | 紙が厚い 枚数が少ない 紙がしっかりしているので、スケッチや水彩画を描くときに使われることが多い 用紙サイズも豊富で用途に応じて選べる |
サイズ | A判、B判 F判 Sサイズ:B5サイズくらい Mサイズ:A4サイズくらい Lサイズ:B4サイズくらい | A判、 B判(一般的に知られている用紙サイズ) F判(人物を描く最適な用紙比率) キャンパスサイズ四六判(イギリスの紙の規格) |
価格 | Sサイズ:約700円/冊(100枚) Mサイズ:約800円/冊(100枚) Lサイズ:約900円/冊(100枚) | B5サイズ:約300円/冊(24枚) A4サイズ:約300円/冊(24枚) B4サイズ:約300円/冊(24枚) |
クロッキー帳とスケッチブックを比較すると、サイズにもよりますが1枚あたり3円〜5円ほどクロッキー帳の方がお得です。
クロッキーのモデル・素材(アナログ・デジタル)
クロッキーのモデルや素材は、自分の描きたいものであれば何でも構いません。
デジタルの場合は、YouTube動画や映画、アニメなどのお気に入りのシーンを素材にすることも可能です。
また、クロッキーの練習用として素材を集めた「Line of Action」「Quickposes」といったサイトや「Pinterest」に投稿されている画像を活用する方法もあります。
アナログでは、ポーズ集や人体骨格などの書籍やデッサン人形、好きなキャラクターや動物のフィギュアなどを活用すれば実写として奥行きや立体感を表現できます。
書籍で素材をお探しの場合は、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
(イラスト初心者おすすめ書籍30選:メキメキ上達する良書に絞って解説!)
鉛筆(ボールペンやサインペンもOK)
クロッキーで描くときには、鉛筆やシャープペンシル、ボールペン、サインペン、万年筆、筆ペンなどを用意しましょう。
ただし、鉛筆やシャープペンシルを使う場合は、柔らかめの芯が向いているので4B〜6Bの芯がおすすめです。また、シャープペンシルは固めの芯で描くと折れやすく、スムーズに描けないこともあるので太めの芯がおすすめです。
クロッキーで心掛けることは、消しゴムで修正しない一発描きです。そのため、ボールペンやサインペンを使用すると修正できないので、クロッキーの良い練習として活用できます。
また、消しゴムを使うのであれば、以下の2種類の消しゴムがあります。
- 練り消しゴム
- プラスチック消しゴム
練り消しゴムは広範囲の黒い部分を消すときに向いており、プラスチック消しゴムは固いので、好きな形状に加工しておけば細かな細部などを消すときに使い勝手が良いです。
クロッキーの目的:何が上達する
クロッキーの目的として、以下の4つのスキルが向上することで画力が上達します。
- 本質を見抜く力
- 観察力や洞察力
- 全体像を瞬時に捉える力
- 構図のバランス力
クロッキーは1分〜10分以内に描くことが一般的であり、瞬時にモチーフとなる対象物の特徴や全体像を把握するスキルが求められます。
また、対象物の特徴を捉えるには、観察力や洞察力が必要となり、繰り返し練習することで本質を見抜く力を養えます。
練習を続ければ画力の底上げになるため、構図バランスの考察力や短時間で集中して描くスキルが身に付き、対象物の特徴を的確に捉えた魅力ある絵を描けます。
デッサンとドローイングとの違いとは
クロッキーは、デッサンおよびドローイングとどのように違うのか解説します。
項目 | クロッキー | デッサン | ドローイング |
手法 | 線画で描く 対象物の全体像や特徴を瞬時に捉える 細部は描かない | 対象物を細部まで忠実に描く 線とトーンで質感を表現する 光の陰影技法を用いる | 線画で描く 描く人の個性やテクニックを駆使して短時間で描く 線の濃淡で表現する |
描く時間 | 1~10分程度 | 数時間以上※対象物によって異なる | 30秒~5分程度 |
必要な道具 | 鉛筆やペン クロッキー用紙 | 鉛筆 消しゴム スケッチブック | 鉛筆 消しゴム スケッチブック |
描く手順 | 全体像を瞬間的に描く | 下絵の作成 輪郭やディテールの描写陰影表現やトーンの追加修正と仕上げ | 下絵の作成 輪郭や形状、ディテールの描写 陰影表現 トーンを追加 修正と仕上げ |
デッサンは対象物の詳細まで忠実に描くので、完成までに時間がかかります。一方、ドローイングは描き手の個性が色濃く反映され、描くテクニックなどを駆使して線の濃淡で瞬時に描きます。
クロッキーの練習は意味ない?
クロッキーの練習は意味がないと感じる人もいるかもしれません。しかし、クロッキーの練習をすれば、次の内容を理解できるので練習する意味はあります。
- 人体の描き方が理解できる
- 重心を捉えられる
- 比率の感覚が理解できる
- 構図の捉え方がわかる
- ポーズの見え方や形がわかる
頭部や胴体、手足まで人体のトータル的な描き方が理解できるので、違和感のある人物画から脱却できます。また、重心を捉える練習にもなるので、重心バランスや平面画でもどこか重みを感じる絵を描けます。
クロッキーは10分以内に描き上げるため、全体の雰囲気やバランスを瞬時に捉える練習にもなるので比率感覚が養えます。さらに、人体構造なども意識して描けば、あらゆる角度からのポーズも違和感なく描けるのでポーズの引き出しも増えます。
また、練習を重ねれば、瞬間的に対象物の全体像や特徴を捉えられます。そのため、対象物の本質を見抜く力が養われ、表現力も豊かになって画力アップにつながります。
クロッキー初心者の練習方法
クロッキー初心者は、何から取り組んで良いのかわからない方も多いので効果的な練習方法を解説します。
モチーフ・素材を決める
まずは、描きたいと思うモチーフや素材を決めます。例えば、家族や友人、家具、車、ペット、果物といった身近なもの、映画やYouTube動画の描きたい1シーン、ステキだなと感じたものなど何でも構いません。
10分程度の短時間で行う
次に、描く時間を10分程度に設定して練習をします。短時間で描く練習は瞬間的に対象物の特徴や全体像を捉える力が養えます。
スマホなどのタイマーを使って10分に設定しクロッキーを行ってください。始めた頃は時間内に終わらないかもしれませんが、繰り返し練習すると慣れるので時間内に描けます。
10分以内に描けるようになったら、時間を短縮して描く練習をすればさらに描写スキルがアップします。
クロッキー初心者の4つのコツ
クロッキー初心者が上達する4つのコツをご紹介するので、ぜひ実践してみてください。
線に強弱を出す
時間内に描けるようになれば、「線の強弱」を意識して描く練習をしましょう。なぜなら、線に強弱が付けば、「質感を表現できる」のでワンランク上のクロッキーを描けるからです。
たかが一本の線ですが、線の強弱で平面の絵に質感を持たせられるので、立体的な表現も可能です。見返したときに何をしたいのか、何を描いたのか、どういったシチュエーションをイメージして描いたのかなど説明しなくても一目で理解できます。
重ね書きは避ける
クロッキーでは、迷い線のような重ね書きは避けてください。理由として、1本線にこだわって描くと線の精度が向上し、絵をうまく表現できるからです。
ただし、重ね書きは問題ないと捉えている人もいます。確かに重ね書きをしても問題ありませんが、自身の感覚を研ぎ澄ませるためやイメージ通りに描くためには、迷い線のような重ね書きをしない方が上達できます。
細部にこだわらない
クロッキーで描く際には、全体像を把握して細部にこだわらず描いてください。なぜなら、クロッキーは全体像を簡単に描く手法であり、細部にこだわる必要がないからです。
例えば、左手を描く場合、手のシワや爪の形状など、細部にこだわって描くと10分以内に描き終わらず、もはやクロッキーではなくデッサンです。
クロッキーは、あくまでも全体の雰囲気を線画で表現する手法なので、細部まで描く必要はありません。
雰囲気をつかむ
描くときには情報量の多い箇所に目が行きがちですが、全体の雰囲気をつかむことを意識して描きましょう。
例えば、ぽっちゃり体型の男性をクロッキーで描く場合、顔や服装などに注目するのではなく、体形に注目して全体像を描きます。
描き終わったクロッキー画と実物を見比べて、全体の雰囲気をつかめていればクロッキー画は成功です。
また、細部へのこだわりが強かったり、全体の雰囲気をつかみ切れていなかったりして雰囲気が似ていない場合は失敗です。
クロッキーで描く場合は、全体の雰囲気をつかむことを意識して練習しましょう。
実際にイラスト未経験がクロッキーを体験してみた
実際にイラスト未経験者が、クロッキーを体験したときに感じたことをご紹介します。
クロッキーのモチーフを選ぶときの注意点
クロッキーで描くときに、モチーフや素材選びで注意すべきことは以下の2つです。
- 描きたいものをモチーフにする
- 立体的と平面的でモチーフを使い分ける
立体的に描きたい場合は、実物やデッサン人形などをモチーフにします。平面的でよければ書籍や映画、ネットイラストなどをモチーフにしましょう。
また、モチーフ選びに悩み過ぎると描く時間が削られたり、描きたくないものをモチーフに選ぶとモチベーションが下がったりします。
そのため、何でもいいので描きたいものをモチーフにすれば、選別も短時間で終わり、モチベーションも維持できます。
消しゴムは使わない
クロッキーでは、消しゴムは使わないことをおすすめします。なぜなら、消しゴムを使うと不要な線を消すため、キレイに形が整ってしまうからです。
クロッキーは対象物の雰囲気を捉えて全体像を描くことが目的です。そのため、消しゴムで線を消す行為はクロッキーで描く目的とは少しズレており、消した時点で全体の雰囲気を捉えられていない証拠です。
そのため、描き始めにいくら迷い線を描いていたとしても、消しゴムを使わないで練習すれば次第に慣れてくるので迷い線もなく描けます。
一度描き終わったモチーフでもイメージでは描けない
クロッキーで描き終わったモチーフを再びイメージで描こうとすると同じように描けません。理由は、モチーフの特徴が記憶に定着していないからです。
クロッキーで練習する人は、画力上達の手段として活用しているので、できるだけモチーフを見ずに同じポーズや構図を描けるように脳裏にモチーフを焼きつける練習をしましょう。
練習方法は始めにモチーフを見て描き、描き終わった直後に再度、モチーフを見ずイメージだけで同じように描く練習をしてください。
この練習を繰り返せば、モチーフの特徴や全体像が脳裏に定着するようになるので効果的に画力が上達します。
クロッキー練習のおすすめサイト・アプリ4選
クロッキーは身近なものだけでなく、クロッキー練習用のサイトやアプリがあるので、おすすめを4つご紹介します。
マジックポーザー
マジックポーザーは、モバイルデバイスを使って3Dキャラクターのポージングなどを直感的に作成できるアプリケーションです。
本物の人形のように3Dモデルを操作できるので、好きなポージング作成が可能です。
また、人体骨格や筋肉、光の陰影などリアルに再現されています。全身・手・足を含めて3,000種類以上のポージング、500種類以上の小道具、100種類以上の髪型と洋服がそろっており、好きなようにカスタマイズできます。
そのため、自分の描きたいポーズやキャラクターの髪型から洋服、小道具に至るまで自分のイメージしている世界観を作り出せるので、アイデア発掘やクロッキーのモチーフや素材探しに役立ちます。
CLIP STUDIO PAINT
CLIP STUDIO PAINTは、3Dデッサン人形の機能があり、ポージングや体形などを自由に変更できます。また、体型だけでなく男性・女性の体型、身長や頭身まであらゆる体型を3Dで再現可能です。
光の陰影もしっかり再現されており、骨格や筋肉の付き方などクロッキーに最適な素材がそろっています。髪や顔、洋服などは表現できないのでシンプルに骨格などを描きたい人におすすめです。
また、CLIP STUDIO PAINTは基本的に有料ですが、無料体験版を利用すれば最大で6カ月間は無料で利用できます。(※2024年8月16日時点)
イージーポーザー Easy Poser
イージーポーザー Easy Poserは、マンガ専用ポーズのアプリケーションでインストールすれば無料で利用できます。
キャラクターの主人公や人獣、モンスターなど、3Dキャラクターを使ってさまざまなポージングを作成できるので、普段では決して見ることのできない角度のポーズを見られます。
また、中世騎士や馬、自動車、バイク、骸骨、恐竜など25種類のモデルもラインナップされており、小道具や服装、光の陰影もわかりやすく再現されているのでクロッキーやデッサンなどの素材に最適です。
HashPhotos
HashPhotosは、iPhoneやiPadの写真アプリケーションで、インストールすれば無料で利用できます。
iPhoneで撮影した写真にタグや位置情報、メモを追加して保存できるので検索しやすい特徴があります。
また、アプリ内で写真の編集や似た写真を比較できる機能もあります。好きな場所や気に入った風景などを写真として保存しておけば、いつでもクロッキーの素材として活用できます。
まとめ:
今回は、クロッキーの練習方法や練習のコツ、おすすめの練習サイトをご紹介しました。
- クロッキーは、1分~10分以内の短時間で全体像の雰囲気を描く方法である
- 鉛筆と紙があればどこでも描ける
- デジタルではイラストが描けるタブレットがあればどこでも描ける
- 瞬時に全体の雰囲気や特徴をつかむ練習になる
- クロッキーは細部にこだわると失敗する
- できるだけ消しゴムは使わない
- 線に強弱をつければ質感を表現できる
- モチーフや素材は好きなものや描きたものを選ぶ
- 映画やYouTube動画などの1シーンを素材にしても良い
- ポージングを探す場合は書籍やサイトを利用する
- クロッキーの練習をすると重心を捉えやすくなる
紹介した内容を実践すれば、初心者の方でも観察力や洞察力が養えるので画力アップに役立ちます。また、モチーフや素材を観察して描くだけでなく、イメージと同じように描ける練習をすれば、さらにスキルアップできるのでぜひ試してください。
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